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[機能性構音障害] アニメのキャラクターを媒介に、子どもたちとコミュニケーションを図る。

塩見 千夏(しおみ・ちなつ)さん

言語聴覚士

大学卒業後、一般企業勤務。その後、平成21年、関西大学大学院外国語教育学修士号取得。英語教育に携わる中で児童の発達障害に関心を抱き言語聴覚士を志す。平成27年、大阪保健医療大学大学院保健医療学修士号取得。※取材当時

INTRODUCTION

機能性構音障害とは、発語に関わる器官の形の異常や、麻痺などの問題が見られないにもかかわらず、上手く発音ができないことをいいます。通常、小さな子どもは、上手に発音ができません。成長に伴って徐々に発音が上手になってくるものです。しかし、ほとんどの子どもが大人と同じような発音をする時期になっても発音が難しい音があり、一部の音が別の音に聞こえてしまう場合があります。そのため話の内容が伝わりにくくなったり、話すことが不安になったりすることがあります。

わが子の発育への不安

「うちの子、『さしすせそ』がうまく言えないんですが、ちゃんと聞こえていないからなんでしょうか?」
小児の耳鼻科で働く私が、これまでに何度も受けたお母さんからの相談です。時に、赤ちゃん言葉と言われるような未熟なおしゃべりの仕方や、発音の仕方を誤って覚えてしまっているケースは、「機能性構音障害」として言語聴覚士の評価・訓練の対象の一つとなっています。
成長に伴い自然に改善するケースも多いのですが、「上の子は2歳でもうすらすら話せていた」、「保育園のお友達にからかわれた」など、お母さんは大きな不安を抱えておられることがほとんどです。お子さんも、毎日言い直しをさせられていたりすると、警戒していつものようにおしゃべりしてくれないこともあります。

関心のあるものを手がかりに

そんな時、私は流行のアニメキャラクターの絵を描くようにしています。すると「ちゃうで、と(そ)こ赤やで」と自然に話しかけてくれるようになり、絵が得意なお子さんなら自分でいろいろ描いて見せてくれ、手先の器用さや性格などをうかがい知るヒントにもなります。また、たくさんあるキャラクターの名前のおかげで、どんな音が言い辛いのかを知ることもできます。そうしてお子さんが元気に笑ってくれるようになると、お母さんも自然と肩の力が抜け、養育の悩みや家庭環境についてもたくさんお話ししてくださるようになります。
適切な評価や訓練の適応を判断するには、ことばの様子だけでなく全般的な発達の度合いや、お母さんの不安の大きさなどを総合的に考慮する必要があります。また、訓練を行う上で、理屈だけでは理解してもらえない小さなお子さんに、いかにコツをつかんでもらうか、そして訓練に機嫌よく取り組んでもらえるかは、この仕事の難しさでもあり、醍醐味でもあります。
どれ一つとして同じケースはなく、毎日が勉強と挑戦の連続ですが、お子さんの輝く笑顔に支えられとても充実した時間を過ごしています。


STをもっと知りたい方は冊子でも

「言語聴覚士という選択」第2版(製作:大阪保健医療大学 言語聴覚専攻科)
この記事の引用元にもなっているこの冊子は、言語聴覚士という職業を知っていただくために作られました。言語聴覚士という選択。その先に何が見えるのか、ぜひご覧ください。ダウンロードはこちら(PDF)から。

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