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ST TEACHERS INTERVIEW

新生児からの
発達段階を学んでください。
それが、小児領域への最初の一步です。

専門領域

子どものコミュニケーション障害

岡崎 満希子

OAKAZAKI MAKIKO

私の教えていること

新生児からの発達段階を学んでください。それが、小児領域への最初の一步です。 01

私は現在「生涯発達心理学Ⅰ」を教えています。この授業は、乳幼児の発達についての概論にあたります。ことばに限らず精神発達の領域も含め、新生児の段階から人はどのように発達していくのか、について学ぶ講義です。小児領域の言語聴覚士が接するのは言語発達について、何かしら困りごとを持つ子どもさんとその養育者の方が中心になりますが、例えばその子どもさんの発達に遅れがあるのかどうか、何か特別な支援が必要なのかどうかについては、一般的な発達段階(典型発達)に関する理解の上で判断することが求められるため、入学して最初に学ぶことがらとして、とても大切な講義になります。

それから、行動観察についての講義も担当しています。子どものVTRを見て、言語聴覚士が観察すべき視点を学びながらその行動を記録します。例えば、困った時に養育者の助けを求めているか、周りが話しかけることばを理解しているか、あるいは話し手のジェスチャーや指さしなども含めて文脈から理解しているのか等について確認しながら観察し記録を取ります。A4サイズの用紙を中央から左右に分け、左側に観察した事実を、右側にその事実から解釈した事項を記す、というように、事実と解釈を分けて記録する練習を行います。これはその後に続く実習に向けた準備でもあります。そのほかにも、発達障害の子どもへの支援方法に関する授業も担当しています。

STとして必要な力とは

本当にそうなのかを
自分で「問い」考える習慣を
02

私の講義では、初めの段階でいくつか「問い」を投げかけるようにしています。これは学生には自分の頭で考えて欲しいという思いがあるからです。答えを教えてもらう、あるいはすでに決まっている答えを待つのではなく、授業に主体的に参加し思考して欲しいのです。例えば、「子どもの発達」の方向性を決めているのは“遺伝”なのか“環境”なのかを考えるという授業があります。発達の要因に関しては、実際に科学で解っている部分と解らない部分があります。社会や医療現場で、いま現在はこれが正しい、と定義されていても、将来新しい発見や解明により、考え方が変わるかもしれません。だからこそ、自明のことであっても、まずは自分で調べ自分の頭で考える習慣を身につけて欲しいと思います。私は、授業の最後の段階でも「これが正解!」とは決めつけないようにしています。定説の他にも、一定の説得力さえあれば、人によってそれぞれの考えがあっていいと思っています。大切にしたいと思っていることは、多様性なのです。学生には定説を踏まえた上で、多様な考えを尊重する人になって欲しいと思っています。

学生のみなさんへ

生きやすさは
障害の程度で決まるのではない。
それは社会のあり方によって
高めていくことができます。
03

実のところ、発達障害は「ここからここまで」などと明確には分けられないと思っています。例えば一般に、自閉症スペクトラム障害の人はコミュニケーションが難しく、細部が非常に気になる、などの傾向を伴うことがあるけれども、「障害が無い」と思われている人たちのなかにも同様な特徴をもっている人はいるし、そうした意味で私は、「障害」と「健常」は実は地続きであると考えています。そうした「障害」の本質を学ぶなかで、言語聴覚士を目指す学生自身にも自分の特徴や得意・不得意等についての気づきがあって、生きるうえでとても参考になると思うのです。特別な知識や技術を身につけることで「自分は特別だ」と奢ることなく、常に謙虚な姿勢で学び続けられる専門職を目指していただきたいです。

さらに専門的に関わる部分だけではなく、周辺を意識してください。障害のある子どもや親に関わる部分だけではなく、その家族全体、親と学校・保育園との関係、保育園の環境、保育の環境を規定する地域社会、あるいは日本という国の文化全体の中で対象となる方を見ていかないと、その障害の持つ意味は理解できない。目の前の“人”だけを見ていてもダメだと思います。障害の程度でその人の生き易さは決まりません。たとえ重度の障害であっても、周りの充分なサポートがあることで人は上手に生きていける場合もあります。生きやすさ、地域のどんなサポートを得られているか、なども大きく関連してきますから、学生には全体の構造や生活を取り巻く環境を知ってもらいたいと感じています。例えば、「母親がしっかり関わらないと子どもはことばをしゃべらないようになる」などという論理に終始してしまったら、結果的に親を追い詰めることになります。親子のやりとりや遊びはもちろん大切だけれども、子どもを取り巻く環境や、社会全体の動きをみながら、支援を進めていかないといけないと思います。

FROM ST TEACHER MESSAGE

岡崎 満希子先生

届けたい想い

自閉症である作家の東田直樹さんは次のように語っています。
「自分がつらいのは我慢できます。
しかし自分がいることで周りを不幸にしていることには僕たちは耐えられないのです」
(自閉症の僕が跳びはねる理由)
これはとても大切なことです。
言語聴覚士として、人の生きやすさとは何なのかを私と一緒に問い続けていきましょう。

岡崎 満希子