Q.大阪保健医療大学に入学される前はどのようなお仕事をされていましたか。
坂田 : 大阪にある企業で、プログラミングなど技術系の仕事をしていました。
坂本 : サプリメントを販売する会社や人材派遣会社で営業職として勤めた後、結婚を機に事務職に移りました。
稲葉 : 一般企業の事務職を結婚後退職し、7年ほど家庭に入った後で薬剤師の調剤補助の仕事に就きました。
Q.もともと医療や福祉が専門であったというわけではないんですね。
一同 : そうですね。。
Q.では、そこからどのようなきっかけで言語聴覚士(以下ST)という仕事を知り、それを目指すようになったんでしょうか。
坂田 : STを目指そうと決心する数年前に、たまたま新聞で小児の言語障害のリハビリに関する記事を目にしたんです。こんな仕事があるんだな、とビビッときたというか。仕事を続けながらも目指せるものなのか調べてみたところ、今の仕事を続けたままでは難しいようだったのでその時は一旦諦めました。
坂本 : 私も子どもも難聴で補聴器を装用しているんですが、子どもが3歳の時に難聴が発覚し、STにかかることになったんです。そこで初めてSTの数が足りていないという現状を知ったのがきっかけです。
稲葉 : 再就職先は人間関係も含め恵まれた職場だったんですが、「一生の仕事」と考えたときもっと他にいい仕事があるんではないか、と。当時身近であった薬剤師になるには時間的にも金銭面でも難しく、ほかの医療職にも範囲を広げて検討しました。そんな中で、世の中には薬では治せない病気や障害があり、そこにアプローチするのがSTだと知ったのがきっかけです。
Q. なるほど。では、そこから実際に本学へ受験申込するに至るまでにはどのような経緯があったんでしょうか。かなりの決断や労力が必要であったと思われますが。
坂田 : 会社から東京転勤を命じられたんですが、家庭の都合でそれに応じることが出来ず退職したんです。新しい生活を始めるにあたり、STになりたかったけれど一度諦めたことを思い出し、改めて情報収集しました。まだ決断しきれていない私の背中を押してくれたのが、この学校の説明会でした。大西先生に「口下手なんですけど大丈夫ですか?」と尋ねたら、とても温かい言葉をかけていただけて。それで、頑張ってみようと思えました。それでも収入面だけ考えると前職の方がよかったので、かなり勇気のいる決断ではありました。
坂本 : 私は子どもの難聴が発覚して2ヶ月くらいで受験を申し込みました。ちょうど、子どもの補聴器が出来上がるタイミングだったので。学校選びに関しては、家からの通いやすさ、大卒2年課程であること、あとは社会人経験のある学生が多いという点でこの学校に決めました。実は、誰にも相談せずに受験を決めてしまったので、主人からは最初かなり反対されたんです。それでも、子どもに障害があることや、実家の応援が必要な点を考えると、この学校が一番通いやすいということで、最後には納得してくれました。
稲葉 : 私は下の子どもが小学校に入学したことがターニングポイントでした。もう少し子供が大きくなるまで待とうかとも思ったんですが、1年延ばすごとに自分も年を取っていくと思って。ただ、そこから受験までにも少し時間がかかりました。母親が強く反対していたんです。STという仕事がよくわからなかったのが一番の理由だと思います。もう親の指図を受ける年齢ではなかったんですが、在学中に子どもの世話を頼むことも考えると理解してもらう必要があって。そんな中、祖母がけがをして入院することになったんです。病室に来られたSTの先生を看護師さんだと勘違いしたことがきっかけでお話しさせていただけて、その先生がこの学校の卒業生で、国家試験の合格率も100%だし、学生の面倒もしっかり見てくれるから、と勧めてくれました。その先生との話を横で聞いていた母も、大賛成してくれるようになりました。
Q.そのあとすぐに退職することになったんですか。
稲葉 : いえ、すぐには決心がつかず、受験し入学金も振り込んだ後でもまだ迷いがありました。いろいろ悩みましたが、今の仕事をたとえ10年続けても補助という業務のままだ、やるなら今しかない、との思いでようやく退職を決意できました。
Q.皆さんそれぞれに様々な思いや決意があったんですね。そのような経過を経て、晴れて入学し感じた事や気づけたことがあれば教えてください。
坂田 : 私は、とにかく勉強が楽しかったです。学生時代とは違って、自分から興味を持って進んだ分野だったのでどの講義も新鮮で楽しかったです。
坂本 : 私は入学時、失語症や嚥下障害のことをほとんど知らず、『言語聴覚士』というくらいだから、言語や聴覚について学ぶのだと思っていたんです。それでも、自分の意志で、自分でお金を払って入学したわけですから、真剣に勉強できました。
稲葉 : 私は想像以上に全国的な職業なんだと分かりました。学会や勉強会が全国規模で開かれていて、今では子どもも大きくなったので私も参加しやすくなりました。
Q.そうですよね。学生さんも就職先を探すときに全国を視野に入れていたりして。 現在は臨床の現場で活躍されている先生方ですが、これまでのキャリアと比べてSTという仕事はいかがですか。
坂田 : 正直に言うと、お給料は多少下がりました。ただ、毎日喜怒哀楽のあるというか、落ち込んだり喜んだり、大変だけれどその分真剣に打ち込める仕事だと思います。
坂本 : 普通の仕事は、仕事中は忙しくても勤務時間が終わればそれまでなんですが、この仕事は勉強を続けていかなければいけないんだなと。ただそれがとてもいいところだと思っています。
Q.そうですよね。勉強すること自体は多少大変だったとしても、その分成長できていることを実感できますよね。
稲葉 : 私もまったく同じで、前職ではあくまで補助的な役割だったのが、今は自分が責任を持って考え行動することが出来ています。「一生の仕事」と考えるとこの点が非常に重要だなと思います。
インタビュアー : キャリアチェンジという大きな決断を経てSTになった皆さんの、素敵な笑顔が印象的でした。お話を聞かせていただき、ありがとうございました。