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ST TEACHERS INTERVIEW

「聴こえない・聴こえにくい」世界を
想像できる、対話者であること。

専門領域

聴覚障害

福田 信二郎

FUKUDA SHINJIRO

福田 信二

私の教えていること

「聴こえない・聴こえにくい」世界で生活することの難しさだけでなく、心理的な影響も想像してみよう。 01

福田 信二

聴覚障害領域を担当しています。聴覚障害児者の聴覚機能の評価はもちろん、言語発達や日常生活への支障度など聴覚障害に起因する様々な障害を評価し、それぞれの機能障害や活動制限を改善・補償する方法を立案し解決する能力を養います。まず、学生の皆さんに伝えたいのは、聴覚障害がある方の日常生活上の様々な障壁やそれに起因する社会との関りにくさや心理的側面への影響を想像することの大切さです。

例を挙げれば、難聴の程度にもよりますが、聴覚障害の影響でテレビの内容が聴き取れない、音楽を楽しめない場合があります。それは単に「テレビの内容が聴き取れない」、「音楽が楽しめない」ということにとどまらず、友人や知人が盛り上がるような共通の会話に参加しにくくなり、疎外感を感じることになれば、社会的、情緒的な面にも影響を及ぼすことになります。このように、聴覚障害は機能的な障害にとどまらず、時に心理的、社会的な面にも影響を与えます。そのことを想像できなければ、対象者が何に困り、何を求めているのかを把握し、適切な援助は何なのかを立案することはできません。聴覚障害の程度を各種の聴覚検査である程度把握することは可能ですが、患者さんが日常生活でどのようなことに困り、どのように解決したいと思っているのかはご本人と対話するなかでしか把握できません。評価等の方法論の前にそのような前提に立つ大切さを伝えたいと思います。

福田 信二
福田 信二

STとして必要な力とは

相手の意図を理解するための「聴く力」と多様なニーズに寄り添う柔軟な姿勢を。 02

福田 信二
福田 信二

聴覚障害がある方への支援で大切なことは、対象者のことばの意図を正確に理解することです。だからこそ質問力はすごく大事です。補聴器や人工内耳の調整一つとっても、同じ表現をされても全く調整方法が異なることがあります。例えば、同じ「うるさい」という表現でも「(自動車や電車などの大きめの音が)うるさい」のか「(自分が聞きたくないような小さな音が色々聞こえてきて)うるさい」のか、それによって調整方法が全く異なります。対象者が言いたいこと、本当に伝えたいことを何なのか?それを聞き出すための質問力が求められます。

私たちは、乳幼児から高齢者までの幅広い年齢層の方を対象とし、100人いれば100通りの生活や人生があります。また長期間関わることが多いため、ライフステージごとに求められる支援の方法や形も異なります。それゆえ、我々はそれぞれの方の想いに応えられるように様々な支援の方法を提案するだけでなく、それらを柔軟にアレンジして実行する能力が求められます。また、お子さんの場合は目の前にある課題だけでなく、長い人生を俯瞰的に見て、先を見据えた支援を考えていく必要があります。

福田 信二
福田 信二

学生のみなさんへ

聴覚障害のある方の聴こえの特性を知ったうえで良き「インタビュアー」になろう。 03

福田 信二
福田 信二

聴覚障害がある方は、何度も聞き返すのが悪いからと、人と会話することに消極的になってしまうことがよくあります。特に感音性難聴を患っている方は相手の声が大きすぎるとかえって聴き取りにくいですし、周囲が騒がしい場合はさらに聴き取りが悪化します。そういった聴覚障害児者の聴こえの特性をわかっているSTだからこそ、スムーズに会話を進めていけるのです。ゆっくり、はっきり、落ち着いた環境で声をかけ、相手の想いを引き出せるのは、やはりST最大の強みだと思います。ただ「言いっぱなし」になるだけではダメで、相手に「伝える」ことを常に考えて会話をして欲しいと思います。

たとえ、聴覚障害の特徴を知り、不便さを想像できたとしても、個々人の具体的な聴こえ方や求める聴こえはそれぞれの患者様に教えてもらうしかありません。補聴器や人工内耳を装用していない自分が、それらを装用されている方の聴こえを調整する訳ですから、患者様は我々の先生とも言える存在です。患者さんに教えてもらえるような関係性を築いて欲しいと思います。

本学には、専任教員以外にも第一線で活躍されている外部講師の先生が多数いらっしゃいます。学生の皆さんが卒業し、臨床ですぐに役立ててもらえるように、私を含め講師の先生方がこれまで臨床で患者様から学んできた知識や経験を余すところなくお伝えします。

FROM ST TEACHER MESSAGE

福田 信二郎先生

届けたい想い

私がいま携わっている聴覚障害の領域は、
赤ちゃんから高齢の方まで年代も幅広いし、
1人の方に関わる時間が長く、
その人の成長や変わっていく様を一緒に見ていける
すごく魅力的な仕事だと思っています。
STはつかず離れず対象児者の人生に伴走します。

福田 信二郎