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ST TEACHERS INTERVIEW

小手先の
HOW TOではなく、
基礎知識を深め、回復の可能性をさぐること。

専門領域

成人のコミュニケーション障害
摂食・嚥下障害

大根 茂夫

OHNE SHIGEO

私の教えていること

障害の原因を突き詰め、
リハビリテーションのプログラムを考えていきます。
01

主な担当授業としては、「失語症Ⅱ(評価)」です。失語症に関する検査法(のやり方)だけではなく結果の解釈、すなわち「評価の仕方」を教える授業でもあります。
具体的にいえば、検査の実施→検査結果の分析→問題点の抽出→リハビリテーションプログラムの立案までが対象です。検査結果の分析のためには、失語症の基礎知識が必要であり、プログラムの立案のためには訓練法の知識も含まれます。
たとえば、物を見ても名前が言えない場合は、その原因がどこにあるかをつきつめて、適切なリハビリテーションが何なのか、どういった手順がよいのかを考えていきます。また成人領域での臨床講義をおこなっています。
くわえて、国家試験対策として成人領域を中心に、神経学、失語症、運動性構音障害、摂食嚥下障害、などの分野の学習サポートもおこなっています。

STとして必要な力とは

小手先のHOW TOではなく、
基礎知識を深め、
回復の可能性をさぐること。
02

「小手先のHOW TOだけでは役には立たない。しっかり基礎知識も貯蓄していくことが大切」だと伝えています。もちろん検査やリハビリテーションの標準的な方法論はありますが、それを基礎として言語聴覚士が10人いれば、10人通りの考え方や進め方があります。言語聴覚士が行う検査は、検査をすれば障害の状態や機序が100%これだとわかるものではなく、また自動的にリハビリテーションプログラムへ導いてくれるようなものはないのです。言語聴覚の領域はまだまだこれから解明していかなければならない領域です。そのため基礎知識をしっかり身に付けて、いろいろな可能性から原因や訓練方法を考えていくことが欠かせません。そのことが患者さんにとっては回復への可能性を広げることにつながります。できれば、1つの科目に対して、よい教科書を何冊か読むことを勧めています。

学生のみなさんへ

「機能」だけではなく、「生活の質」をどうしたら上げられるかを考えて欲しい。 03

言語聴覚士は、専門的な知識と技術があればできるというものではありません。言語聴覚士が備えていなくてはならない資質(こころ)について、私は次のように考えています。

  • 障害をもつということの意味を感じるこころ。
  • 患者さんとその家族が置かれた状況を理解できるこころ。
  • 患者さんとその家族の生活を支援していくために、最善をつくすこころ。
  • 障害の解明に努める研究者としてのこころ。

失語症をはじめとする言語機能障害や摂食嚥下障害は脳の損傷によることが多いため、今の医学をもってしても、完全な回復は果たせないことが多いことを認めなくてはなりません。
それでもエビデンスに裏打ちされた機能回復訓練プランと最善のコミュニケーション手段を模索し、提供するのが言語聴覚士の責務です。

これまでにも数々の直接的な言語機能改善プログラムや代替的なコミュニケーション方法(機器)が開発されてきました。もちろん医学の進歩は続いていますし、昨今では、情報・通信技術(IT)の進歩がめざましく、携帯電話のメールや写真送信機能、iPhoneやiPadのようなタッチパネル式のPCタブレットの開発は、言語機能障害者にとって更に効率の良いコミュニケーション代替手段の出現を予感させます。それと同時に機能回復はやはり、我々言語聴覚士にしかできないことですから、機能回復の可能性も模索し続けなければなりません。いずれにしても究極の目標は、患者さんの「生活の質」を少しでも良いものにすること、あるいは患者さんに「夢」を実現してもらうためと言ってもいいかもしれません。

FROM ST TEACHER MESSAGE

大根 茂夫先生

届けたい想い

これからの医療はエビデンスに基づいた医療、科学的根拠に基づいた医療がますます求められると思います。
私は、言語聴覚療法の対象とする障害の中で、特に運動性構音障害や摂食嚥下障害は運動障害であり、
その治療の根拠は神経科学や運動生理学にあると考えています。
私が担当する授業の中では、神経科学や運動生理学の知見も散りばめながら進めていきたいと思っています。
また、失語症の訓練法も認知神経心理学の考え方が取り入れられ少しずつ進化しています。
新しい考え方も紹介しながら授業を進めていきます。
皆さんの興味もどんどん広がっていくことでしょう。
一緒に勉強していきましょう。すべては患者さんのために。

大根 茂夫