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対象となる障がいと臨床

聴覚障害(難聴)

耳のどの部分に障害が起こったかによって聞こえの程度や特徴が異なります。
耳の聞こえが悪くなると、話しことばによるコミュニケーションに問題が生じ、意志や感情の伝達がし難くなります。

なんだか、まわりの音が
聞き取りにくいかも?

聴覚障害(難聴)とは、「周りの音や話し声が聞こえにくい状態」のことです。もともと私たちの耳は、音を大きくする機能を持っています。音を大きくする機能がきちんと働かない場合、入ってくる音が小さくなり聞こえにくくなります(伝音難聴)。また、大きくする機能は働いても、音を脳に伝えるには電気信号に変えて神経で脳まで運ぶ必要があります。ここでの働きがうまくいかない場合も音は聞こえにくく、音を理解することがむずかしくなります(感音難聴)。
こうした難聴は1,000人に1人の赤ちゃんに見られますが、病気や事故によって聞こえにくくなる場合があり、治療や手術が必要になったり、補聴器を使って聞こえを補わなければならなくなったりします。

こうした難聴は、1,000人の赤ちゃんに一人見られますが、その後の人生で、病気や事故により聞こえにくくなる場合があり、治療や手術が必要になったり、補聴器を使って聞こえを補わなければならなくなることがあります。

例えば、こんなこと/
こんな時ありませんか?

出産後、産院でしてもらった検査で、
聞こえにくいかもと言われた。
もう1歳半になったんだけど、
まだおしゃべりをしない。
おばあちゃんのテレビの音量が、
やたらと大きい。

治療で聞こえにくさが
治らないときには、
補聴器や人工内耳を。

耳鼻咽喉科では、耳だけでなく鼻や喉も一通り診察した上で聞こえの検査をし、その結果によって鼓膜の動きを測る検査やことばの聞き取り検査、さらには音を電気信号に変える細胞の働きを調べる検査、画像検査などを医師が適宜選択して実施します。検査後の診断を受けて治療が開始され、服薬治療や外科的治療、補聴器装用、人工内耳埋め込み術が選択されます。
補聴器は、「音を大きくして耳に聞かせる機械」です。以前は周囲の音も話し声も等しく大きくしていたため、聞きたい音が聞こえ難いと不評でしたが、近年は雑音抑制の機能が発達し、話し声がすっきり聞こえる補聴器が増えてきました。「人工内耳」は難聴の程度が重い方が対象とされており、電極を体に埋め込んで直接聴神経に電気刺激を与える補聴医療で、内耳性の障害のある方に聞こえの可能性を与えています。

不必要に大きな音を聞かない。

音は私たち人間をつなぎ、環境をつなぎます。私たちの耳は、20,000Hzの範囲の音の高さを1Hzの違いでも区別でき、さらに紙がこすれるような小さな音から、飛行機の爆音等の強大音まで広い範囲で聞くことが可能な大変高性能なものです。しかし、飛行機の爆音クラスの大きさの音を2秒聞き続けると、音を電気信号に変える細胞が死滅し、二度と元に戻らず、難聴になってしまいます。また、遺伝子的にある薬物を摂取すると難聴になりやすいタイプの方もいます。耳を大切にするためには不必要に大きな音を聞かず、家族に難聴者がいる場合は遺伝子診断を行って医師に相談しましょう。

こんな未来も始まっています。

「人工内耳は20世紀最高の医療機器」といわれ、手立ての無かった最重度の難聴者に「聞こえ」の恩恵を与えました。人工内耳を着ければ、生まれつきの重い難聴児でも、騒音のある場面・複数の会話以外でなら、自由に話が聞けて話せるようになりました。髪の毛で人工内耳が隠れていると難聴があることに全く気づかれないほどで、完成形に近い発展を遂げています。また、生まれつき耳の形が整っていない人への再生医療の応用も始まり、将来具合の良くない聞こえの器官全てを再生医療で置き換えるという治療も視野に入ってきています。

周囲の方へ。

たとえ補聴器や人工内耳で補ったとしても、難聴の無い耳と同じように聴くことはまだ不可能です。騒音抑制されているとはいえ騒音が大きい場合や複数での会話の理解は困難なことが多いものです。難聴の方には、出来るだけ静かな環境で、ゆっくり、ハッキリ、やや大きめの声で話をする配慮が必要です。

もしかしたらと思ったら...

聞こえにくい、と本人や周囲の人が感じたら、必ず耳鼻咽喉科医の診察を受けましょう。
最初は近くで開業されている耳鼻咽喉科の医師に診てもらうと良いでしょう。難聴の多くは、開業医の方の治療で快復することが多いものです。
また、朝起きたら耳が急に聞こえにくくなった、という場合は、できる限り早く耳鼻科を受診しましょう。治療開始が遅れるほど、元通りにならないことがあります。