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対象となる障がいと臨床

失語症・高次脳機能障害

脳の損傷によって後天的に生じることばの障害です。
ことばを聞いて理解すること、話すこと、読んで理解すること、書くことが難しくなります。
失語症は外見からはわかりにくく、専門家のサポートが必要です。

「話すこと」だけでなく、
「聴く」、「読む」、「書く」に関する脳の障害。

わたしたちは、見たり聞いたり話したり、毎日いろいろな情報を処理しています。また、その情報を記憶し、それをもとに思考したり、計画を立てて実行したりしています。これらの機能は高次脳機能とよばれ、大脳の働きが深く関わっています。言語機能も高次脳機能の一つです。大脳の「言語野」とよばれる部分が脳卒中や交通事故などで損傷されると「失語症」になります。
「えーっと、ほら、誰だっけ?今、ドラマで人気の…」みなさんも頭の中に言いたいことがあるのにことばが出てこなくて伝えられないもどかしさを経験したことがありませんか。こういう状態を『喚語困難』と言いますが、失語症ではこれが会話の中で頻繁に起こります。また「りんご」を「みかん」と言ってしまったり、「めがね」を「メガデ」と言い誤ったりします。失語症は外国に行った時の様子によく例えられます。その症状は、話したいことがあるのにことばが出てこない、誰かが話しかけてくれても意味がわからない、文字は見えてもその意味がわからない、文字で書いて伝えることもできない―。このように、話す、聴く(聴いて理解する)、読む(読んで理解する)、書くという「ことばを使って行うこと」全てが難しくなるのが失語症です。重症度も幅広く、重度の失語症の場合、周囲から“何もわからなくなってしまった人”と誤解される場合がありますが、知的な面も感情も保たれており、状況理解ができることが多いものです。

喚語困難 … 
言いたいことばが出てこない

語性錯語 … 
「眼鏡」を「時計」などと言い誤る

聴覚的理解障害 … 
聴いて理解することが難しい

音韻性錯語 … 
「メガネ」を「メガデ」などと言い誤る

例えば、こんなこと/
こんな時ありませんか?

うまくことばが出てこない、
話の内容が理解できない。
「うどん」を「そば」と言ったり、
「テレビ」を「テレべ」と言ったり、
言い間違うことがある。
ことばを言いにくそうにしているので
書いてもらおうとしたが、
文字もうまく出てこない。

検査や治療は、患者様の日常をよく知ることから始まります。

失語症では、まず、詳しいことばの検査で『話す』『聴く(聴いて理解する)』『読む(読んで理解する)』『書く』のそれぞれの能力がどのような状態であるかを調べます。そして、その結果を基に、障害のメカニズムを考え、訓練の内容を決めます。
訓練では、低下した言語機能を向上させることも大切ですが、保たれている力を使って、その方がどうすればコミュニケーションがとりやすいかを考え実践することも大切です。
ことばは、生活と共にあります。患者様が日常生活をどのように送っておられるかも訓練の目標や内容を決める際に重要です。言語症状だけではなく、患者様をよく知ること、これがスタートです。

生活習慣の見直しで、脳の血管を健康に保ちましょう。

「高次脳機能障害」の原因疾患は、脳卒中などの脳血管疾患が81.6%を占めます(平成20年度東京都高次脳機能障害者実態調査)。脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破れたりすることで起こります。予防は、脳の血管を健康に保っておくことが最も大切です。
脳の血管に悪影響を及ぼすのは、動脈硬化、高血圧、高脂血症、糖尿病などです。これらがあると、血管は弾力を失い、硬くもろくなって破れやすくなったり、詰まりやすくなったりします。塩分と動物性脂肪を控えた食事をする、糖分を摂りすぎない、たばこをやめる、適度な運動をする、ストレスをためないなど生活習慣を見直し、予防に努めましょう。

こんな未来も始まっています。

ことばの障害は、外から見てもわからず理解しづらいものです。また、人とのコミュニケーションがうまくできないことで、疎外感、孤立感が生まれやすくなります。失語症では、『話す』『聴く(聴いて理解する)』『読む(読んで理解する)』『書く』のすべてに難しさがあるため、例えば、『話す代わりに書いて伝える』という手段も万全ではありません。その分、円滑なコミュニケーションをしづらくなるのですが、ちょっとした工夫やコツを知ることで、お互いに意思疎通しやすくなります。そうしたコツを一般の方に知ってもらい、失語症の方のコミュニケーションや社会参加の支援を行う人を養成する「失語症者向け意思疎通支援者養成事業」が厚生労働省によって進められています。家族や言語聴覚士だけでなく、社会の人々全体が支援し合って暮らしていく。素晴らしいことですね。

周囲の方へ。

ことばは人と人をつなぐ大切なツールです。今まで自由に使っていたことばがうまく使えなくなった時のもどかしさや喪失感はとてつもなく大きいはずです。私たちがコミュニケーションを工夫することで、失語症の方は意思疎通しやすくなります。ぜひ参考にして実践してください。

短く簡潔に話しかけてください。
失語症の方はことばが出てくるまで時間がかかります。少し待ってください。
言いたいことばと異なることばが出てしまうこと(錯語)があります。肝心なことがらは、文字に書いて見てもらい、確認しましょう。
伝えたいことを漢字の単語で書いて、それを見せながら話してください。多くの場合、仮名より漢字の方が理解しやすいです。

もしかしたらと思ったら...

失語症の原因となる脳卒中は突然起こることが多いですが、事前に兆候がある場合もあります。左右どちらかの手足、あるいは顔の片側の急な麻痺・しびれ、吐き気を伴う突然の強い頭痛、ろれつが回らない、ものが二重に見える、視野が半分欠ける、会話がかみ合わない、ことばが出てこない、呼びかけても右側あるいは左側ばかり見るなどの症状が急に現れた時は、すぐに脳神経外科や神経内科で診察を受けましょう。自覚症状が一時的なものであっても、深刻な脳梗塞の前触れであることがあります。また、脳梗塞では、血管につまった血の塊を溶かす治療ができることがありますが、発症後4時間半までに治療を開始できなければいけません。症状が現れた場合は、迷わず早く受診しましょう。